50th JAST, TURNING POINT.

MESSAGE

CROSS TALK02

「世界中の健康」のために
両社のデータ技術で
医療・ヘルスケア業界に
次のイノベーションを

湊 方彦 氏 × 平林 武昭

湊 方彦 氏

IQVIAジャパングループ会長。AT&T社のアジア太平洋地域代表・日本法人社長、IBM社のアジア太平洋地域オペレーション担当ディレクターなどを歴任し、2009年にヘルスケア関連データ・テクノロジー・コンサルティング会社IMSに入社。2016年、医薬品等開発業務並びに営業マーケティング受託機関事業を展開するQuintiles 社との統合を経て現職へ。

JAST×IQVIA

2022年9月、当社では、IQVIAジャパングループIQVIAソリューションズジャパン株式会社との間において、ヘルスケア分野に関する業務提携を開始しました。IQVIA社は、医療・ヘルスケア業界において高度な分析機能やテクノロジー、臨床試験サービスなどを提供する世界的リーディング企業です。この協業により、両社の持つ医療ビッグデータやノウハウを活用し、人々の健康増進や医療の効率化に寄与する、新しいサービス・ソリューションを創出したいと考えています。

データは貴重な“資源”
利活用できてこそ、人・国へのメリットとなる

湊方彦会長(以下湊会長) このたびは50周年記念の対談という晴れがましい場にお招きいただき、ありがとうございます。

平林武昭(以下平林) こちらこそ、お忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。

湊会長 2022年からJAST様との協業がはじまりましたが、この協業は当社の考えにまさに合致したことでした。

平林 ありがとうございます。

湊会長 といいますのも、当社は、製薬メーカー様や病院様、健康保険組合様など、医療に携わるさまざまな方をお手伝いしながら医療に貢献しており、いま目指しているのは医療・ヘルスケア分野にイノベーションをもたらすことなのです。
当社は創薬や医療行為に直接携わってはいませんが、医療ビッグデータやさまざまな情報、ネットワーク、仕組みを変えることによって、医療にかかわるプロセスを変えられるかもしれないと考えています。データや専門知識を持つ人々、そしてテクノロジーを世界中にある仕組みなどと組み合わせ、新しい知見を発掘したり画期的なプロセスを創出したりできないかと。これを当社は『コネクテッド・インテリジェンス』と表現していますが、全世界の約86,000 人の社員たちがここを目指して日々取り組んでいるんです。イノベーションをお届けし、そして、最終的に世界中がもっと健康になればと考えています。

平林 会社というのは本来イノベーションを起こす義務があると考えています。私は、まだコンピュータが珍しかった時代に「この機械は世界に革命を起こす」とインスピレーションを感じ、ソフトウエアの無限の可能性を確信して1973年に会社を立ち上げました。
当初はお客様の元へスタッフを派遣する受託システムでしたが、だからこそお客様の求めるものや世間の大きな流れをキャッチできたんですね。初めて自社製品の開発に乗り出した際には、社会課題として大学の抱えている問題に取り組み、教育の主役である学生の立場に立ったシステムが必要だと考えて、戦略的大学経営システム『GAKUEN』シリーズを開発しました。その次に着目したのが医療分野でした。日本では相当な国家予算を医療費に使っており、その額は年々増える一方です。このままでは医療財政がパンクするのでは?と危惧したことから、医療の適正化に貢献しようと、診療報酬明細書の自動点検システム『JMICS』を開発しました。2010年からサービスを開始していますので、人の健康や病気、治療などに関する膨大なデータが集まっています。実はこのデータは資源なんですね。石油や石炭と同じ意味を持っているといえます。

湊会長 「データは資源」というのは言い得て妙ですね。その観点から見ると、石油や石炭と同様に、日本はデータも“少資源”です。個人情報の利用に敏感なこともあってもともとデータの収集も進んでいないし、データの利活用はもっと行われていない。世界的に見ても、日本はデータの利活用が大分遅れてしまっています。病院や薬局、健康保険組合、自治体などにデータはあるのですが、それを活かせていないのです。
医療・ヘルスケア分野でデータを利活用しないと何が起こるか? 恐ろしいことに、世界市場から無視されることになります。つまり、例えば日本の患者さんにだけ治療薬が届かないということが起こります。国が財政に負担をかけてまで守っている、せっかくの国民皆保険制度が活きないという事態になるんですよね。

医療ビッグデータを
健康増進や予防医学、薬の開発に役立てたい

平林 少し前から当社でも『JMICS』で蓄積したデータを活かしたいと考えたのですが、IT会社単独でできることにも限度があり、しばらくは右往左往しました。個人データの漏洩などがあれば一大事ですから、慎重に動かなければならないというのもありましたし。協業していただける医療関係の企業を探していたところ、IQVIA様の方からお声を掛けてくださったのです。

湊会長 実は、JAST様は我々の業界では有名な会社で、ずっと前からJAST様を存じ上げていました。
当社のコネクテッド・インテリジェンスを世界中で推進しようとすると、一社だけでできる訳がありません。例えば薬の場合、画期的でイノベーティブな新薬が完成すると、そのひとつの製品で世界の治療を一変することもできます。しかし我々IQVIAがとるべきイノベーションへのアプローチでは、世界のあらゆる国や地域で医療ビッグデータを持つ会社と協業し、莫大なデータを常に正確で最新なものに保つというような地道な努力を積み重ねる必要があります。センシティブなデータを取り扱うため、「儲かるから」という考えの会社は論外ですし、コツコツと堅実に事業を推進されている会社と協業したいと思っていました。すみません、間違っているかもしれませんが。当社もコツコツやる会社なんで(笑)。

平林 いえいえ、おっしゃる通りです(笑)。確かに、私ももともと製造業に携わっていたせいか、地道な努力を大切にするところがあります。IQVIA様とはそういうベースが合うと思います。
今、当社の『JMICS』は多くの地方自治体などで採用され、医療費の適正化や不正防止に役立てていただいています。今後、医療ビッグデータを用いれば、病気を未然に防ぐ予防医療に役立てることもできる。そうなれば医療費も軽減し、本人にとっても国にとってもいいことばかりです。

湊会長 特にレセプトデータは予防医療に非常に有効ですね。AIを活用すると、高い精度で「こういう状態の方は将来こんな疾患になる」という予測ができます。なので、今のうちにどう対策すればいいかがわかるんですね。医療財政が逼迫する中、お金も含めて医療資源の投下は防げない疾患が優先されるべきで、防げる疾患は皆で必死になって防がなければいけないと思います。

平林 ただ、個人情報の取り扱いには細心の注意が必要ですね。当社はIT会社なので、情報に鍵を掛けて盗まれないようにするのは得意なのですが。

湊会長 個人データを守るには、鍵の掛け方だけでなく情報の持ち方もポイントで、生データのままではなく個人を特定されない状態に加工しておくことが大切になります。「自分の病気のことが人に知られるのはイヤ」と、不安に思う方もいらっしゃると思いますが、医療ビッグデータ利活用では個人を特定する必要はないのです。こうした技術は盗む側とイタチごっこですから、毎年継続した投資が必要ですし、年々変わる国の法規や規則にも適切に対応しなければなりません。私たちは、そこに対してはかなりの投資を行っており、万が一がないように努めています。

薬の治験はデータで短縮できる
日本を「本当の医療先進国」とするために

湊会長 ほかにも、医療ビッグデータを利活用すれば、治験のコストや期間を大幅に縮小することができます。通常、大規模な治験でも3,000 人程度ですが、大切なのはこの治験データに加え、実環境で多くの人たちの治療法や経過、効果などのエビデンスをデータで把握することです。これを活用することで治験の効率化や精度を高めることが叶うようになってきました。リアルワールドデータと呼ばれるものですが、日本ではこの利活用できる状態のリアルワールドデータが非常に少ない。リアルワールドデータ後進国です。

平林 IQVIA様と当社が持つ医療ビッグデータを統合すると1,300万人を超える大規模データベースとなります。業界トップクラスのデータ量を活かして、今までにない「驚き」や「感動」を与えるようなサービスを生み出すことができますね。新たなサービスの創出や強化を通じて、医療・ヘルスケア分野の社会課題解決に一層貢献できる。IQVIA様との協業は、当社にとって重要なターニングポイントになると考えています。

湊会長 偶然にも、両社とも「イノベーション」をキーワードにしています。IT系、医療系というそれぞれの立場をうまく活かしながら、ともに新しい価値を創出していきたいですね。リアルワールドデータ後進国のままでは医療先進国になりえないので、医療ビッグデータの利活用は絶対に実現すべきです。日本をリアルワールドデータ後進国から先進国へと引き上げるためにも、今回のJAST様との協業に期待しています。

平林 当社では、世の中の方々に医療ビッグデータのメリットや価値を知っていただくために「未来共創ラボ」を立ち上げ、ヘルスケア関連企業様との新規商材開発や大学との共同研究を推進しています。
また、IQVIA様は世界100以上の国と地域で事業展開されていて、当社はアジアを中心に事業展開しています。医療ビッグデータを活用したサービスを世界中の人々や企業に提供することで、医療・健康に関する多種多様な社会課題に貢献していきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。

湊会長 ありがとうございました。こちらこそよろしくお願いいたします。