• 2024.07.03

【頭痛診療にもDXの波】薬物乱用頭痛のエビデンスデータの可視化と疾患予測モデルの開発に成功

当社と勝木 将人先生(糸魚川総合病院、諏訪赤十字病院 脳神経外科・頭痛外来、現 長岡技術科学大学 准教授)との間において実施中の「片頭痛と、片頭痛医薬品及び薬物乱用頭痛の関連性」に関する共同研究の成果について、第6回日本メディカルAI学会学術集会にて発表いたしました。

■背景

頭痛は日本人の4人に1人が保有していると言われ、長期間にわたって医療費が伴う疾病です。その中でも片頭痛は、日本人全体での有病率は8.4%と、多くの人が悩まされています。

一方で、近年では片頭痛の特効薬となる急性期治療薬(※1)や予防治療薬の開発も進んでいますが、急性期治療薬の過剰摂取による薬物乱用頭痛の発生等について問題視されるケースがあります。

この状況に際して、当社は勝木 将人先生協力のもと、当社のメディカルビッグデータ「REZULT」を活用した、「片頭痛と、片頭痛医薬品及び薬物乱用頭痛の関連性」に関する共同研究を2022年10月より実施しています。

https://www.jast.jp/cms/wp-content/uploads/2022/10/ir_notice20221018.pdf 参照)

 

■学会概要

名称   :第6回日本メディカルAI学会学術集会

テーマ  :ともに生成する医療の未来

日時   :2024年6月21日(金)~22日(土)

会場   :名古屋市公会堂(岡谷鋼機名古屋公会堂)

公式サイト:https://www.congre.co.jp/jmai2024/index.html

 

■発表概要

演題1(口演):

医療レセプトデータに基づく成人頭痛患者における薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の現状解析

発表日時 :2024年6月21日(金)9:40~10:40

概要:

本研究では成人頭痛患者の処方パターンを解析しました。解析の結果、日本における急性期治療薬過剰処方が頭痛患者全処方の16.6%を占めるという実態が明らかとなりました。また、成人の薬物乱用頭痛が将来的に発症するかどうかを、初診から3ヶ月の処方パターンから予測するモデルの試験的作成も実現しました。

 

演題2(ポスター):

医療レセプトデータに基づく成人片頭痛患者における薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の現状解析

概要:

本研究では成人片頭痛患者の処方パターンを解析しました。解析の結果、日本におけるトリプタン過剰処方が片頭痛患者全処方の5.1%を占めるという実態が明らかとなりました。また、2021年の新薬登場及びガイドラインの刷新により、2023年には処方パターンの適正化が見受けられ、片頭痛診療のアンメットニーズ(※2)の解消に向けて社会変革が起きようとしていることが明らかとなりました。

 

 

■今後の展望

本研究では薬物乱用頭痛患者の処方パターンが明らかとなりました。今後は医師だけでなく、患者も医療従事者も薬物乱用頭痛のリスクを正しく知り、適切な急性期治療薬の使用と処方が望まれます。この社会課題に対して、当社は研究成果を基に保険者や医療機関、製薬企業と共に疾患啓発への取り組みを検討する予定です。

また、演題「医療レセプトデータに基づく成人片頭痛患者における薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)の現状解析」については、医療機関及び製薬企業、保険者向けビジネスに活用すべく、地域による特徴などを分析し研究のブラッシュアップを実施して参ります。

 

■研究メンバー

※以下敬称略

勝木 将人(諏訪赤十字病院 脳神経外科)

山田 雄矢(日本システム技術株式会社 未来共創Lab)

 

■一般財団法人日本メディカルAI学会の詳細は以下をご参照ください。
https://www.japan-medical-ai.org/

 

■メディカルデータ「REZULT」の詳細は以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/

 

■未来共創Labについて

当社未来共創Labはメディカルビッグデータ「REZULT」活用や伴走型による新規商材開発を通し、他企業やアカデミア、自治体との連携を強め、共創DXを推進している組織です。当社のデータと企業価値を高め、お客様の課題を解決するための可能性を広げるべく、今後も取り組みを進めて参ります。

 

また未来共創Labでは、SDGs(Sustainable Development Goals)目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」へ向けて、メディカルビッグデータを利活用した健康増進を目的とし、産学連携での商材開発・共同研究を実施しています。

 ■ 共同研究者について

勝木 将人(糸魚川総合病院脳神経外科、諏訪赤十字病院 脳神経外科・頭痛外来、国立大学法人長岡技術科学大学)

<略歴>

2016 年 東北大学医学部医学科卒業

2021 年 糸魚川総合病院脳神経外科 医長

2023 年 諏訪赤十字病院 脳神経外科・頭痛外来

2024 年 国立大学法人長岡技術科学大学 体育・保健センター 准教授

日本頭痛学会、日本脳神経外科学会、日本メディカル AI 学会等に所属。脳卒中や頭痛診療の傍ら、日本の経済復興・医療過疎地域に関する問題を解決するため、公衆衛生活動や医療 AI の研究に尽力している。

 

※1:急性期治療薬

急性期治療薬とは、片頭痛発作が起こったときの痛みを速やかに抑え、仕事や生活にできる限り早く戻れるようにするための治療薬です。

 

※2:アンメットニーズ

アンメットニーズとは人々の欲求やニーズの中でもまだ満たされていないものを指す言葉です。医療分野では、いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズのことを指しており、アンメット・メディカル・ニーズともいわれます。

 

※3:医原性MOH

以前から一次性頭痛を持つ患者において、急性期または対症的頭痛治療薬を3ヵ月を超えて定期的に乱用(治療薬により1ヵ月に10日以上、または15日以上)した結果として、1ヵ月に15日以上起こる頭痛のことを薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛、MOH)といいます。この中でも医師による不適切な過剰処方によるものが医原性MOHです。

 

【本件に関するお問い合わせ】
日本システム技術株式会社 未来共創Lab
お問い合わせ:https://www.jastlab.jast.jp/contact/
未来共創Labサイト:https://www.jastlab.jast.jp/

 

以上