当社は、独自に保有しているレセプトデータを中心としたメディカルビッグデータ「REZULT」を基に、熱中症について独自調査を実施しました。
■調査概要
今年の夏、日本は記録的な猛暑に見舞われ、多くの地域で気温が35℃を超える日が続いています。7月の平均気温は過去最高を記録し、多くの地域で猛暑日が連続して観測されています。この異常な暑さは、全国各地で深刻な影響を及ぼしており、熱中症による救急搬送者数も急増しています。
今年の4月からは新たに「熱中症特別警戒アラート」の運用が開始されており、例年以上に熱中症に対する警戒が高まっています。
本レポートでは、データという視点から、熱中症についてさらに深く理解すること目指し、当社のメディカルビッグデータを用いて患者動向を分析しました。
【集計条件】
調査対象:JASTの保有するレセプトデータ(約900万人 2024年8月時点)の内、2020年1月~2023年12月診療、ICD10「T678 熱及び光線のその他の作用」、疑い病名を除く
1.月別患者数の推移
2023年5月~10月の月別熱中症患者数及び昨年からの増加率を算出しました。
夏にかけて患者数が増加し、7月と8月にピークを迎えています。昨年と比較すると、熱中症の増加率が100%を超えている月が多く、特に8月と9月の増加率が顕著です。次第に暑さに慣れてくる頃ではありますが、油断せず対策を行うことが重要です。
このような増加傾向は、気候変動や都市化の進行により、気温が上昇していることが一因と考えられます。以下は2023年と2022年における東京の平均気温を表したものです。
気象庁の公開しているデータによると、2023年の東京の平均気温は、前年同月と比べて7月は1.3℃、8月は1.7℃上昇しています。こういった気温の上昇も、熱中症の患者増加の一因と考えられます。気温上昇は今後も続くという予想もあり、引き続き更なる注意と対策が必要です。
2.年代別患者数
次に年代別熱中症患者数を算出しました。
患者数が最も多いのは10代でした。これは、学生は大人に比べて外での活動が多いからなのではないかと推察されます。10代の若者は成長期にあり、体がまだ完全に出来上がっていないため、重度の熱中症に至ってしまう危険性もあります。特に暑い季節には、周囲の大人が適切な休憩や水分補給を促すことも重要になってきます。次いで患者数が多いのは50代です。50代はグランド・ジェネレーション(※仕事や趣味でアクティブに活動するシニア層)の入り口である一方で、体力が徐々に低下し始める時期でもあります。自分自身の体調に気を配り、無理をしないようにすることが大切です。
3.過去発症割合に関する調査
熱中症に1度発症したことのある方は、その後も繰り返しやすい傾向があると言われています。ここでは、2023年の患者のうち、過去に熱中症を発症したことのある患者の規模と、その内訳について調査しました。
2023年の熱中症患者のうち、過去(2020年~2022年)にも熱中症を発症したことのある患者の割合は、約12%でした。これを年代別で見ると、年代が上がるにつれ高くなっていき、50代が最も高くなる結果となりました。これは、年齢を重ねるにつれて体力の低下や高血圧などの基礎疾患を持つ割合が増え、熱中症の発症リスクが高まるためと考えられます。
今回はレセプトデータを用いて、熱中症の患者数を抽出し、その傾向を調査しました。2023年の直近のデータによると、熱中症患者が増加していることがわかりました。また、年代別では10代や50代の発症リスクが高いことが判明しました。しかし、年代や体質と関係なく、適切な対策を取らなければ誰でも熱中症になる可能性があります。こまめな水分補給や、少しでも体調に異変を感じたら涼しい場所に避難するなど、個人での注意が重要です。
■当社未来共創Labサイト内にも同様のレポートを掲載しております。以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/news-20240819/
■本件で利用したメディカルビッグデータ「REZULT」につきましては以下をご参照ください。
https://www.jastlab.jast.jp/rezult_data/
■未来共創Labについて
当社未来共創Labはメディカルビッグデータ「REZULT」活用や伴走型による新規商材開発を通し、他企業やアカデミア、自治体との連携を強め共創DXを推進している組織です。当社のデータと企業価値を高め、お客様の課題を解決するための可能性を広げるべく、今後も取り組みを進めて参ります。
また未来共創Labでは、SDGs(Sustainable Development Goals)目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」へ向けて、メディカルビッグデータを利活用した健康増進を目的とし、産学連携での商材開発・共同研究を実施しております。
【本件に関するお問い合わせ】
日本システム技術株式会社 未来共創Lab
お問い合わせ:https://www.jastlab.jast.jp/contact/
未来共創Labサイト:https://www.jastlab.jast.jp/
以上